法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価に対する意見

2011年6月15日
法科大学院協会

貴省が実施された「法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書」に対する意見募集(パブリックコメント)に際して、本協会では、本年1月24日付けで貴省に対して意見(別紙)を送付したところである。
この度、法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価(以下、「本政策評価」という。)の実施に当たり、改めて、本協会として以下のような意見を申し述べるので、貴省においてご検討の上、適切なご配慮をいただきたい。

1.平成22年ころには司法試験合格者数を年間3000人程度とすることを目指すとした閣議決定が未達成であるなどの現状に鑑みれば、本政策評価が、法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策を総合的に推進する見地から、適切な形で実施されるべきことについて異存はない。
しかし、法曹養成制度は、法科大学院教育、司法試験及び司法修習が有機的に連携するように設計されたものであり、裁判官や弁護士を含む法曹全体の在り方とも緊密に結び付きを有することから、法務省及び文部科学省が実施する政策に留まる問題ではない。このような認識に基づいて、本年5月、内閣官房長官、総務大臣、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣の申し合わせにより、法曹の養成に関するフォーラムが設置され、法曹の養成に関する制度の在り方について検討が開始されたところである。
本政策評価の実施に際しては、法曹の養成に関するフォーラムとの関係を明確にし、調査・検討が重複したり、また相互に矛盾するような事態が生じることがないように配慮いただくとともに、司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画において示されている、法曹人口の拡大及び法曹養成制度改革の基本方針を踏まえて、その政策の総合的推進・実現を図るために適切な内容の評価・調査となることを希望する。

2.法科大学院は、大学に設置された教育研究機関であり、憲法第23条が規定する学問の自由及び大学の自治の保障を受ける。学問の自由は、大学において研究成果を教授する自由を含み、大学の自治は、大学の教授その他の研究者・教員の人事の自治を、その重要な内容とするものであって、行政機関等が、このような自由あるいは自治に対して不当な干渉を行うことは許されない。
もちろん、大学が、社会に対して一定の説明責任を果たすとともに、各自における教育研究の質の向上を図るため、教育研究に関する評価や調査を受ける必要があることは言うまでもない。しかし、その際には、学問の自由や大学の自治の観点から、対象となる事項や手続等について慎重な配慮が求められるところである。法科大学院についても、認証評価機関による第三者評価・適格認定や中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会による調査においては、大学関係者や法曹関係者によるピアレヴューが確保されるなど、この点に関する制度的・手続的な手当てがなされている。
これに対し、本政策評価のために法科大学院を対象として実施される今回の調査は、あくまで行政機関が行う政策に対する評価に資するために行われるものであるうえ、貴省行政評価局及び貴省管区行政評価局の職員によって実施されるものであるから、各法科大学院の教育研究の具体的な在り方に関わる事項や、教員の人事に関わる事項に及ぶべきものではない。しかるに、調査の対象となる各法科大学院が貴省より伝達を受けているヒアリング事項の中には、教育内容や人事の在り方に踏み込んだものが含まれており適切ではないので、その変更を検討いただく必要があると考える。
また、本政策評価のための調査の実施にあたっては、教育研究に関してどのような専門的能力あるいは経験を有する者が、ヒアリングその他の調査を実施し、いかなる観点及び方法により分析・評価を行うのか、さらには調査結果をどのような形で利用するかについて、調査の対象となる各法科大学院に対して、明確かつ責任ある説明が行われる必要があると考える。教育研究に関する調査に対して大学が協力するためには、調査の内容のみならず、その方法・利用の在り方等が、憲法第23条に照らして適切であることが、その前提条件となることを十分に認識していただきたい。

3.貴省より各種のデータ及び資料の提出依頼がなされているが、その多くは、認証評価機関による第三者評価・適格認定や、大学設置・学校法人審議会の法科大学院設置計画履行状況等調査により既に明らかにされている事項である。このような調査が重複して行われること自体が不効率であるばかりか、教育研究に専心すべき各法科大学院関係者に過度の負担を負わせることになるので、既に文部科学省等の関係機関が全法科大学院を対象として行った調査資料等の利用を検討いただくなど、調査事項や提出資料については今一度見直し、厳選していただきたい。また、とりわけ各法科大学院において授業が行われている学期中において、このような調査等を実施する際には、教育研究の実施に支障なきよう、回答期限やヒアリングの時期等について、十分な配慮をいただきたい。

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