News Letter No.23(2009年6月20日理事会及び総会報告)

法科大学院協会事務局

 法科大学院協会理事会が、2009年6月20日(土)午前11時より、また、同総会が、同日午後1時より、國學院大学渋谷キャンパス若木タワー地下1階会議室及び120周年記念2号館2101教室において開催されました。会場の提供・準備にご尽力いただきました平林勝政教授をはじめとする國學院大学関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
以下、総会で審議・決定された事項を中心に、概要をご報告申し上げます。

総会では、議事に先立ち、文部科学省高等教育局専門教育課の藤原章夫課長より挨拶があり、その中で、①中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会が4月17日付で取りまとめた最終報告『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』の概要及び②法科大学院を取り巻く政治的状況について、説明がありました。引き続き、議事に移り、後藤昭常務理事の司会のもと、以下の事項について報告と提案がなされ、いずれも承認されました。

1 平成20年度決算の件

浦川道太郎財務担当理事より、平成20年度決算案についての説明があり、野坂泰司監事より、適正である旨の監査報告があった後、決算案が承認されました。

2 法曹養成制度のあり方に関する連携協議の件

連携協議委員会の大澤裕主任より、本年度の連携検証と五者協議会について、次のとおり報告と提案があり、承認されました。

  1. 前回の理事会・総会で承認された基本方針に従い、全会員校に対し、本年度の連携検証への協力を依頼したところ、66校の会員校(総会終了後、67校に拡大した)から協力を可とする回答を得た。
  2. 本検証の目的で提供される司法試験の成績情報の形式が、関係当局の方針変更により、得点形式から段階評価形式に改められる可能性が出てきた。遺憾とすべきところもあるが、変更が不可避である場合には、それを前提にできる限りの検証を行うという姿勢で臨むこととしたい。
  3. 昨年の検証結果を報告する五者協議会の開催が見込まれるが、この点については、連携協議委員会において、五者協議会及び同幹事会の構成員である井上正仁常務理事、大貫裕之事務局長と相談しつつ対応することとしたい。
  4. 五者協議会のもとに、既設の検証ワーキンググループと並んで、法曹養成制度全般に亘る五者の意見交換を目的とする第2ワーキンググループ(名称未定)が設置される見込みである。この点についても、連携協議委員会において、井上常務理事、大貫事務局長及び執行部と相談しつつ対応することとしたい。

3 適性試験実施主体の件

担当の永田眞三郎専務理事より、大学入試センターが適性試験の実施を取りやめる平成23年以降の適性試験実施主体の問題について、前回の理事会・総会で報告・承認された方針に従い、日弁連法務研究財団との協議が進んでいる旨、報告がありました。

4 法科大学院修了者職域問題の件

法科大学院修了者職域問題等検討委員会の浜川清主任より、法科大学院修了者の職域拡大のための取組みについて、次のとおり報告と提案があり、同委員会の鈴木修一委員から補足説明があった後、承認されました。

  1. 企業採用の促進に関し、企業に対して修了生を対象とする夏季採用を4月から依頼している。5月30日に法政大学市ヶ谷キャンパスにおいて企業法務シンポジウムを開催した。今後、関西地区、中京地区でも同種企画の開催を予定している。法務省における「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する意見交換会」が本年度も継続される。
  2. 官公庁採用の促進に関し、5月8日、「法曹有資格者の公務員登用促進に関する協議会取りまとめ」が公表された。霞ヶ関インターンシップが本年夏から開始されるほか、府省庁業務説明会が10月上旬に東京その他で開催される予定である。
  3. 修了生の進路調査に取り組むべく、具体的な実施方法について、委員会で検討中である。各法科大学院において、取組みを行ってほしい。
  4. 委員会の委員を鈴木秀美教授(大阪大学)、高田賢治准教授(大阪市立大学)、松井宏興教授(関西学院大学)に委嘱し、関西地区の体制を強化した。今後も、地域バランスを考慮しつつ、体制強化を図りたい。法科大学院の就職支援担当者について52校で決定しているが、全校で決定して就職支援ネットワークに参加してほしい。
  5. 就職支援サイト・ジュリナビは、今年度以後、文部科学省の助成金が無くなるが、協会としては、協力してその継続的運営を確保したい。

5 共通的到達目標の検討の件

カリキュラム検討委員会の山本和彦主任より、共通的到達目標に関する検討について、次のとおり報告がありました。
3月に京都大学で開催されたシンポジウムを通じ研究組織による検討内容がある程度明らかにされたこと、中教審大学分科会法科大学院特別委員会の報告において共通的到達目標の策定が提言されたこと等の状況を踏まえ、委員会としても、今後、具体的な対応を検討することとしたい。

6 教員研修等の件

教員研修等検討委員会の田口守一主任より、次のとおり報告がありました。

  1. 本年度の教員研修は、民事系については8月20日、刑事系については9月8日にそれぞれ実施する予定である。
  2. 研修内容は、集合修習(新修習)の見学と司法研修所側との意見交換とし、成果について会員校で情報の共有ができるよう方策を工夫したい。
  3. 委員会の委員を片山直也教授(慶應義塾大学)に委嘱した。

7 その他

(1)アンケート調査結果の公表の件
後藤昭常務理事より、法科大学院協会が実施した教育の質の改善に関するアンケート調査の結果公表に至る経緯について、次のとおり説明がありました。
本年1月8日付でアンケート調査を実施し、その調査結果については、大学名を匿名としたうえ公表する方向で会員校の同意を得、準備を進めていたが、4月末、一部のマスコミが大学名を明示したうえ調査結果の特定部分のみを取り上げて報道するという遺憾な事態が発生した。これに対し、協会としては、つまみ食い的報道による誤解を避けるべく、改めて会員校の同意を得たうえ、6月1日、改善内容の具体的記述を含むアンケート調査結果の全体について、大部分の会員校の大学名を明示した形で公表した(大学名及び回答内容の公表については、各法科大学院の意向に従った)。これによって、入学者選抜から修了認定まで、局面ごとに多様に積み重ねられてきた法科大学院における教育の質の改善努力の全体像を示すことができたものと考えている。

事柄の性質上、情報管理には十分な意を用いていたつもりであったが、結果的に前記のような遺憾な事態が生じるに至ったことについては、会員校にお詫びしたい。

(2)最近の状況について
後藤常務理事(理事会は大貫事務局長)より、前回理事会・総会後の協会内外の動きについて、次のとおり報告があった後、意見交換が行われました。

  1. 協会執行部と日弁連執行部との間で継続しているインフォーマルな意見交換会を、4月15日(第6回)、6月2日(第7回)に行った。次回は、7月14日に予定している。
  2. 協会執行部と司法研修所との間で継続しているインフォーマルな意見交換会を、4月20日に行った。次回は、6月29日に予定している。
  3. 日弁連が3月18日に「当面の法曹人口のあり方についての提言」を公表した。
  4. 自由民主党内に3月13日「法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会」が設立され、4月17日付で緊急提言を発表するなど、精力的に活動を続けている。
  5. 5月20日、公明党の司法制度改革委員会・法務部会の合同会議による意見聴取、6月18日、民主党の法曹人口のあり方と法曹養成制度の改善方策に関する検討プロジェクトチームによる意見聴取にそれぞれ応じた。

(3)臨床系科目における刑事記録閲覧に関する実情調査について
臨床系教育等検討委員会の潮見佳男主任より、次のとおり報告と提案があり、承認されました。
臨床系科目における刑事記録の閲覧問題については、昨年、日弁連からの呼びかけで非公式の意見交換を数回行った後、検討が中断していたが、最近になって、いくつかの単位弁護士会から協会に対し取り組みを求める要望が非公式ながら出されているので、さしあたり、データ収集のため、各法科大学院における刑事記録閲覧状況についての実情調査を行うこととしたい。

(4)その他
日弁連の小林優公副会長より、司法修習生の就職問題について、次のとおり依頼がありました。

  1. 現行及び新62期司法修習生の進路内定状況の調査結果によると、未内定のまま修習終了を迎える者の大幅な増加が予想される。各法科大学院においても、就職活動への支援に配慮をお願いしたい。
  2. 新63期司法修習予定者に対する就職関係情報の提供について、各法科大学院においても、協力をお願いしたい(資料として、『新第63期司法修習予定者の皆さんへ就職活動で活用していただきたい情報をご案内します!』『地方で独立開業してみませんか?』『津々浦々にひまわりの花を-ひまわり募金法律事務所のご案内-』『法テラススタッフ弁護士になりませんか?』が配布された)。

東京弁護士会の由岐和広副会長(東京三会就職問題担当副会長)より、新63期司法修習予定者を対象とする東京三会就職合同説明会の開催について案内がありました。
日弁連の武井康年副会長より、新63期司法修習予定者に対し修習開始前に実施が予定されている実務導入研修について、概要説明と協力依頼があり、協会としての共催(日弁連からは最高裁判所と法務省にも共催が申し入れられている)と会場提供の協力について了承しました。

(5)次回の総会等について
後藤昭常務理事より、次回の理事会・総会について、12月12日(土)に明治大学または中央大学を会場として開催すること、総会終了後シンポジウム(テーマ未定)を開催する予定であることのアナウンスがありました(開催校については、末尾の「事務局からのお知らせ」第4項をご参照ください)。

なお、議事の締めくくりに当たり、青山善充理事長より、次のような総括的発言がありました。
現在、法科大学院にとって重要なことは何か。
第1は、各法科大学院が、その特徴を発揮しつつ、教育の質を向上させることである。修了者が、司法試験に合格できるだけの学力あるいは法務博士という学位に相応しい職場で活動できるだけの学力を十分に身につけることができるよう、努力を続けることが必要である。

第2に、司法試験合格者数については、「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」との2002年3月の閣議決定が堅持されるべきである。日本の司法の将来を展望するとき、3000人という数は、司法を担う卵の数として、国際的に比較してみても決して多すぎることはないであろう。

第3に、法律専門職に対する需要を掘り起こし、法科大学院の在学生・修了者と様々な職域とを接合することが急務である。狭い意味の法曹以外にも、企業法務や公務員という可能性を秘めた進路がある。法科大学院の修了生がそのような社会の様々な場に進出していくことは、司法制度改革の趣旨に沿うものでもあろう。

第4に、入学定員は単に削減すればよいというわけではないが、アウト・プットとイン・プットのバランスをあまりに失し、入学しても修了できないあるいは就職できないという問題が大規模に生じるとすれば、制度としての欠陥があるといわなければならない。定員削減は、そのような制度のゆがみを正す1つの方法であり、「教育によって鍛えれば十分なアウト・プットを出せる学生を厳選して入学させる」という視点から考えられるべきである。

第5に、予備試験の制度設計については、簡略化を求める動きがあると伝えられるが、それは、「プロセスによる法曹養成」の理念を根底から崩しかねない。法科大学院修了者と同等の学識・応用能力・実務の基礎的素養の有無を判定するのが予備試験であり、それにふさわしい厳格な試験が行われる必要がある。また、受験資格については、法科大学院の在学生が予備試験を受験することは、法科大学院の教育の現場に混乱を招くばかりでなく、経済的理由等により法科大学院に進学できない者に法曹への途を開くという予備試験制度の趣旨にも反する点で、慎重な扱いを要する問題である。

今夏から秋にかけ、総選挙や新司法試験の合格発表があり、司法修習生の就職状況も明らかになる。これらにより、法科大学院を取り巻く状況も大きく変動する可能性があり、まさに正念場といえる。
このような状況のもとで、各法科大学院にお願いしたいことは、法科大学院教育の成果を積極的にアピールしていただくことである。各法科大学院が専門職大学院の責任として、修了生の進路にも関心を持って追跡し、その活躍状況をホームページ等で公表してほしい。それを法科大学院協会のホームページからもリンクを張るなどして集約することができれば、社会的な意味は少なくないであろう。変化の激しい時代において、生き残っていくためには、わかりやすい自己PRが必要であり、その努力をお願いしたい。

事務局よりお知らせ

1 常務委員の補充について 
前回3月の総会後、理事会の承認を得て、早稲田大学の秋山靖浩教授に常務委員にご就任いただき、すでにご活動いただいております。ホームページの充実を中心とした協会の広報活動について特にご担当されます。2 専門委員会の委員の資格について
専門委員会には、実務家である法科大学院教員もメンバーとして加わって活動していただいておりますが、このような方が法科大学院教員を離れられた際には委員の資格を失うものかという問題が提起されました。そこで、専門委員会の委員の資格について、理事会で次のような確認をしました。
専門委員会委員は、法科大学院協会会員校の教員で構成するのが原則である。
但し、必要があるときは、専門委員会主任の意見により、理事会は会員校の教員でない者を専門委員会委員に加えることができる。

3 専門委員会の委員の補充について
総会後、理事会の承認を得て、次の方々に専門委員会の委員にご就任いただくこととなりました。
法科大学院修了者職域問題等検討委員会 松生光正教授(九州大学)
カリキュラム等検討委員会 宍戸常寿教授(一橋大学)、山本隆司教授(東京大学)、只木誠教授(中央大学)、宇藤崇教授(神戸大学)、笠井治教授(首都大学東京)

4 次回総会等について 
次回総会等の開催校は中央大学(後楽園キャンパス)に決定されました。12月12日(土)10時半から理事会、12時半から総会、14時からシンポジウムの予定です。詳細は、近くなりましたら改めてお知らせいたします。

 

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