News Letter No.51(2021年12月18日〔土〕理事会及び総会報告)

法科大学院協会事務局

 法科大学院協会の理事会が2021年12月18日(土)13時00分より、また総会が同日15時より、いずれもzoomによるオンライン方式で開催されました。
 以下、総会で審議・報告された事項を中心に、概要をご報告申し上げます。

 総会では、議事に先立ち、佐々木邦彦文部科学省高等教育局専門教育課専門職大学院室長から挨拶と、中教審特別委員会(第11期)の主たる審議予定事項(未修者教育の充実、新たな5年一貫教育制度の着実な実施、志願者数の増加に向けた取組、社会に貢献する法科大学院のあり方など)、認定連携法曹基礎課程を置く学部3+2法曹コースの実態調査、令和3年度司法試験の在学中受験の導入等に伴うカリキュラムに関する調査、設置基準及び法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律による法定公表事項、法科大学院等の教育に関する定量的な数値目標、令和3年度の法科大学院のICTの活用・科目等履修・未修者教育の取組み等の状況の調査結果等について説明があり、また、政府関連文書において犯罪被害者・アルコール依存症への理解の促進、女性法曹の育成等に関連して法科大学院への言及があることから配慮されたい旨のお願いがありました。
 続いて片山直也理事長(慶應義塾大学)から挨拶があり、未修者教育改善に向けた委託事業との関係での各種アンケートやヒアリングへの協力、FD活動への参加に対して謝辞が述べられたほか、「協会の当面の課題は引き続き、いわゆる3+2を軌道に乗せること、及び未修者教育の充実である。このうち未修者教育については、4回の協会内FD活動を実施し、活発な議論ができた。これを持続可能なフォーラムとして定着させていきたい。次なる課題は、制度改革後のロースクール2年目以降の応用教育・実務教育の充実化である。今般の法曹養成制度改革は、法学部(法曹コース)・司法修習との連携の強化に特徴があり、これを軌道に乗せることが重要である。後者については司法研修所との間で連携の枠組みが整えられつつあり、この枠組みを生かしつつ議論の活性化を図っていきたい。このほか、在学中受験終了後のカリキュラムの充実も課題である。協会としては、会員校での取組を踏まえて、また関係団体とも連携して、積極的に法科大学院教育の魅力をPRし、法科大学院の志願者増につなげていきたい。とりわけ現在高まっている協会内外での連携・共同の枠組みをより強固なものとしていきたい。」旨が述べられました。

1.準会員の退会
 松下淳一専務理事(東京大学)から、近畿大学が準会員として入会することが7月23日付けで理事会により承認された(規約11条)ことの報告がありました。

2.人事に関する件
(1)常務理事の交代
 松下専務理事から、常務理事の土井真一教授(京都大学)が退任し、後任に笠井正俊教授(京都大学)が選任された(規約15条)ことの報告がありました。
(2)被選考理事の交代
 松下専務理事から、法科大学院代表者の交代に伴い、下記の理事の交代があった(規約13条4項)旨の報告がありました。
笠井正俊理事→酒井啓亘理事(京都大学)
(3)専門委員の追加委嘱
松下専務理事より、各種専門委員会において、以下の通り追加で委員の委嘱を行ったことの報告がありました。
・未修者基礎教育小委員会:花本広志教授(獨協大学)。
・司法修習連携等検討委員会:粟田知穂教授(慶應義塾大学)、内田義厚教授(早稲田大学)、原悦子教授(東京大学)、稗田雅洋教授(早稲田大学)。

3.今年度のキャラバン企画の実施報告
 松下専務理事より、2021年度のキャラバン実施状況について、東京会場についてはオンライン開催(4月24日(土))であったこと、東北会場も6月26日(日)にオンラインで実施されたこと、12月25日(土)に、広島会場で対面式のキャラバンが予定されていることの報告と、会場校、および共催団体である日弁連、後援団体である文科省、法務省、最高裁による協力への謝辞がありました。

4.令和4年度(2022年度)のキャラバン企画の実施計画
(1)東京キャラバンの実施
 東京キャラバンについては、2021年度と同様に事務局を中心にオンラインで実施すること、技術的に外部に依頼できる部分については外注することを前提に準備を進めること、例年配布していたチラシについては費用対効果が薄いことから取りやめることが承認されました。
 これを受け、松下専務理事より、現在のところ、2022年4月23日(土)が実施予定の第一候補日であること、詳細については追って会員校MLにて案内があることの補足説明がなされました。
(2)他会場
 地域毎のキャラバンについては、2022年1月~3月頃に、各開催校に現地でのキャラバンを行う予定があるかどうかを尋ね、開催する予定であれば、本年度と同様上限20万円として来年度キャラバン開催予算として計上することが承認されました。
(3)キャラバンをいつまで続けるのか
 今後いつまでキャラバンを続けるのかについて、2023年(在学中受験が開始する令和5年)までは開催し、2014年以来10回実施したところで、改めてゼロベースで継続の是非について検討することが承認されました。

5.各専門委員会からの活動報告
(1)カリキュラム等検討委員会「未修者教育に関する取り組みについて」
 山野目章夫カリキュラム等検討委員会主任(早稲田大学)から、未修者教育の充実に向けた取組みとして、文部科学省の委託事業の枠組みで4回にわたる協会内FD活動(第1回=刑法、第2回=憲法、第3回=民法、第4回=アクティブラーニング)を実施したこと、動画教材の試作への協力も進めていること、2021年度末に向けてこれらのセミナー・動画制作等の成果の会員校への還元・共有のための活動を進めていく予定である旨の報告がありました。
(2)修了生補助教員ネットワーク委員会
 高須順一修了生補助教員ネットワーク委員会主任(法政大学)より、一般社団法人法曹養成ネットワークと協力して、各法科大学院に向けた補助教員に関するアンケートを2021年9月に実施したこと、より具体的なヒアリングを2校の法科大学院で実施し、さらに5校程度で実施予定であること、補助教員同士の意見交換の機会の提供について具体的な日程調整を行う段階に入っていることの報告がありました。
(3)司法修習連携等検討委員会「司法修習との連携について」
 和田俊憲司法修習連携等検討委員会主任(東京大学)より、司法研修所との間でオンラインでの意見交換の機会を持ち、その成果として2022年2月に司法研修所と法科大学院の間の意見交換会をオンラインで実施するほか、第74期集合修習のオンライン傍聴の機会を2回設けて頂くことになったことの報告があり、各催しの日程や申し込み方法について説明がありました(代読)。
(4)司法試験等検討委員会「司法試験アンケートについて」
 堀田周吾司法試験等検討委員会主任(東京都立大学)より、9月の出題趣旨公表後、令和3年度司法試験に関するアンケート調査をGoogeフォームを通じたオンラインでの回答方式により実施したこと、調査結果をまとめた報告書をメーリングリストで配布したほか、その概要を司法試験シンポジウム(12月4日・日弁連主催)で報告したほか司法試験検証担当考査委員会議にも提供したこと、また協会のウェブサイトでも公表予定であることの報告がありました。
(5)入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会「共通到達度確認試験の実施について」
 藤本亮入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会主任(名古屋大学)より、2022年1月9日に第3回共通到達度確認試験を実施予定であること、試験問題等が各校に発送済みであること等の報告があり、またコロナウィルス感染のリスクがある中での対応について会員校に対し謝辞が述べられました。
(6)臨床系教育等検討委員会「委員会での取り組みについて」
 宮川成雄臨床系教育等検討委員会主任(早稲田大学)より、委員会での本年度の検討の成果をまとめた「臨床法学教育の課題-2021年度-」が総会に提出され、その骨子(短期の問題意識として、連携法曹基礎課程の設置を踏まえて、学部段階の法学教育にも臨床の要素を採用すること、中期の問題意識として、在学中受験可能化の中でいかに法科大学院カリキュラムにおいて臨床系科目の充実を図るか、長期の問題意識として、臨床系教育の教育実績をいかに継承発展させるかを、それぞれ設定した上で具体的な対応策を提示することにしたこと)について説明がありました。詳細は、追って協会HPに掲載される「臨床法学教育の課題-2021年度-」を参照してください。
(7)修了生職域委員会「修了生の職域拡大のための取り組みについて」
 阿部道明修了生職域委員会主任(中央大学)より、前任の阿部博友教授から引き継いで新たに同委員会主任となったこと、就任後の活動として、2021年11月8日に組織内弁護士協会(JILA)との意見交換会を行ったこと、その中の話題で特に注目されるものとして司法試験未合格の法科大学院修了者が企業法務に一定数就職していることがあったこと、彼らの実態把握が重要であり、また何らかの形での就職支援ができればよいと考えられ、これらに向けた活動をしていきたいこと、このほか国家公務員・地方公務員に関してどのような活動ができるかは今後の検討次第であることの報告(代読)がありました。
(8)広報委員会「法科大学院協会からの情報発信について」
 磯部哲広報委員会主任(慶應義塾大学)より、今年度のキャラバン東京会場の開催に先立ち、法科大学院協会のウェブサイト中の学生向けページに「法曹コース」の概要を案内するページを作成し、2021年11月に当該ページに会員校・準会員校の法曹コースサイトへのリンク集を作成したことが、協力を頂いた各会員校・準会員校に対する謝辞とともに報告されました。これに併せて画面共有によりサイトの紹介があったほか、協会の学生向けウェブサイトの周知に努めていく旨の抱負が述べられ、そのためのチラシがすぐに利用可能な形で総会資料として配布され、会員校・準会員校での学部生等への広報に活用して頂きたい旨が述べられました。

6.未修者教育に関する協会の取り組みについて
 松下専務理事より、カリキュラム等検討委員会の報告にあった通り、未修者教育について、今年度は法曹養成ネットワークが受託した未修者教育に関する事業に協会が協働することにより、FD活動、試験的な動画教材の作成、補助教員のネットワーク構築の検討を行っており、特にFD活動については、これまでになかった会員校間の連携による教育内容の底上げが出来たと考えている旨が述べられた上で、来年度以降の活動の在り方について、法科大学院教育の充実のために有益と考えられる企画などがあれば随時事務局まで提案頂きたい旨の意見募集がなされました。

7.関係機関との連携の促進について
 片山理事長より、これまでも日弁連、経営法友会、法曹養成ネットワーク等外部の関連諸団体、諸機関と連携してきたが、今後こういった連携の重要度は一層増していくと考えられるため、連携先団体のHPのリンクページを作成してより効果的に広報活動を行うなどしていくという連携促進の基本方針について提案があり、承認されました。

8.「司法試験問題漏えい再発防止策」の改訂について
 2014年に発生した司法試験問題漏えい事件を受けて、2016年6月21日付で作成された「司法試験問題漏えい再発防止策について」と題する文書について、在学中受験の導入により司法試験委員会の考査委員遵守事項が改訂されたこと、コロナ禍での法科大学院教育におけるICTの活用の実情を反映させる必要が生じたことを踏まえた改訂が承認されました。併せて事件から既に5年以上が経過しており、漏洩者の執行猶予期間も過ぎたことを踏まえ、文書から個人名・所属大学を削除することも承認されました。改訂された文書の発効日は、司法試験委員会による考査委員遵守事項の改訂の発効日です。

9.コアカリについて
 片山理事長より、いわゆる「コアカリ」、「法科大学院における共通的な到達目標」(第二次案修正案)について、その2010年策定後民法・商法で大きな法改正がされているにもかかわらずこれまで改訂されてこなかったが、協会執行部として見直しの検討を始める必要があると考えており、同趣旨の指摘を会員校からも頂いている旨の説明があり、カリキュラム等検討委員会に小委員会を設置して、まずはコアカリの在り方について総論的に検討し、またさらに、環境が整えば、喫緊の課題である民法・商法のコアカリ改訂について検討を始めることが提案され、承認されました。また、松下専務理事より、この件について意見・質問・自校の取組みの紹介等を事務局に寄せて頂きたい旨のお願いがありました。

10.その他(最近の状況に関する報告、意見交換等)
(1)理事長からのお願い
 片山理事長より、①専門委員会の委員につき、任期は1年であるが、委員の先生方には来年度の留任についてご協力を賜りたい、②未修者教育の充実化の取組みに関連し、引き続き関係する専門委員会および会員校の皆様に協力をお願いすることが出てくると考えられ、とりわけ今後は、商法・刑事訴訟法・民事訴訟法・行政法についてもFD活動を開始していきたいので、各科目の担当の先生方にご協力を賜りたい旨のお願いがありました。
(2)前回総会以降の活動報告と意見交換
 松下専務理事より、前回総会以降の活動報告として、ニューズレターの発行、司法研修所との意見交換会、司法試験の合格者名入り官報の予約販売の案内の実施、司法試験シンポジウム(日弁連主催)の共催がなされたことの説明がありました。

 議事終了後、一般社団法人「法曹養成ネットワーク」の内村涼子理事より、同ネットワークの活動内容につき、法科大学院協会・各法科大学院との協働を含め、説明がありました。

 次回総会は、2022年6月11日(土)にオンラインで開催する予定です。