News Letter No.44 (2019年3月11日臨時理事会及び臨時総会報告)

法科大学院協会事務局

 法科大学院協会の臨時理事会が、2019 年3 月11 日(月)11 時30 分より、慶應義塾大学・三田キャンパス南館B1 階2B11 教室で、また、臨時総会が、同日14 時より、同館B4 階2B41=42 教室で開催されました。開催に当たり会場の提供・準備にご尽力くださいました、北居功法科大学院長をはじめとする慶應義塾大学関係者の皆様に厚く感謝申し上げます。
 以下、総会で審議・報告された事項を中心に、概要をご報告いたします。
 総会では、議事に先立ち、大貫裕之理事長(中央大学)から、本日は法科大学院協会創設以来最も重要な総会であり、活発な議論をお願いする旨の挨拶がありました。

1 法曹養成制度改革関連法案について

 大貫理事長から、通常国会への上程が予定されている、法曹養成制度改革のための関連四法(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、学校教育法、司法試験法、裁判所法)に係る法案(以下「法案」)に関し、これまでの協会の対応状況等について、以下の通り報告がありました。
・司法試験の在学中受験を認める法改正に向けた検討の動きがあるとの情報を受けて、2018年9月15日開催の臨時理事会において、「法科大学院志願者数が未だ低迷しており、予備試験の志願者増が法曹養成制度全体に深刻な影響を与えている状況に鑑み、「3+2」と共に法科大学院生に司法試験の在学中受験を認めることにより、法曹資格を得るまでの期間を2年間短縮し、法科大学院を中心とした法曹養成制度の再構築をめざすという基本的な方向性には、協会は、専門職大学院としての法科大学院教育が維持されることを条件として、反対しない」との基本的方針、及び次の(1)~(4)の具体的な対応方針が決定された。
 (1)司法試験の実施時期について:法務省に対し、3年生前期に司法試験は行わないことを求め、最大限に法科大学院らしい教育を確保する見地から、3年の可能な限り遅い時期、又は3年の夏休み期間中、のいずれかに司法試験を実施することを求めること
 (2)司法試験改革のための会議体の設置について:制度変更に伴い必要になる司法試験の内容について検討・議論する会議体の設置を法務省・関係団体に求めること
 (3)予備試験について:上記司法試験改革に伴い、試験科目や内容の見直し、受験資格の制限を法務省に求めていくこと
 (4)多様な法曹輩出のための配慮の要請:制度変更に当たっては、多様な法曹を輩出するという法科大学院の理念に沿った未修者への十分な配慮、各法科大学院の現状に合った制度運用を可能とすることを法務省・文部科学省に求めていくこと
・上記臨時理事会決定を受け、協会執行部(理事長・専務理事・事務局長をいう。以下「執行部」)から、同年9月20日に文科省・法務省に対し上記4 点について申入れをし、同月25 日付で会員校宛に上記決定内容等を報告する文書を送付した。
・同年11月10日開催の定時総会において、上記臨時理事会で決定された基本的方針及び執行部が関係機関と交渉を進めることが承認された(News Letter No.43参照)。
・本年1月末、今期通常国会で法案が上程される予定との情報を得たため、執行部では情報収集の上、2月4日に会員校に文書を送付し情報の共有を図った。その後、2月6日に法務省から制度見直しの全体概要の説明を受けた。
・2月12日に自由民主党文部科学部会・法務部会・司法制度調査会合同会議において、執行部がヒアリングを受け、昨年11 月の定時総会において承認された方針に則り説明を行った。
 同会議の席上、文科省・法務省より法案の概要が説明され、法科大学院在学中の司法試験受験資格の導入に関する事項のほか、次の①~③の方向で検討している旨の口頭説明があった。
 ①司法試験の論文式試験から専門的な法律分野に関する選択科目(倒産法、労働法、経済法、租税法、環境法、知的財産法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系))を廃止すること
 ②専門的な法律の分野に関する能力の修得については、法科大学院課程において、展開・先端科目のうち、上記科目の少なくともいずれか1 科目の設置・履修を法令により義務付けること
 ③②を踏まえ,法科大学院課程を修了した者との同等性を判定する予備試験の趣旨に鑑み、予備試験の論文式試験に選択科目を追加するとともに、一般教養科目の論文式試験を廃止すること
 加えて、法務省から、法改正に関連する事項として、④新しい司法試験の実施時期については、司法試験委員会の決定事項ではあるが、法科大学院における学修への影響が少ない夏頃の実施を選択肢の一つとして検討している旨説明があった。
・執行部では、2月13日に会員校に対し、上記①~④について意見照会を行った(37校から回答)。
・その後、選択科目については,法務省・文科省において協議・検討した結果、2月26日の自民党の合同会議では、選択科目存置の方向で法案の内容を検討している旨報告された。
 執行部は、選択科目の扱いについて、事前に副理事長・常務理事の意見を聴いた上で、同会議では次のように回答した。
 法曹になるまでにかかる時間的・経済的負担を軽減し、法科大学院を中核とする法曹養成制度を維持発展させることが喫緊の課題であること、また、選択科目の存廃について現時点で意見の一致を実現することは、時間的余裕がなく極めて困難であることを考慮すると、「3+2」と併せて在学中受験を認めるパッケージとしての改革を実現するためには、選択科目の存廃がいずれであっても、在学中受験を認める法案を支持する。
・その後、3月1日に、法案について自民党の合同会議における審査が行われた。

 続いて大月光康文部科学省高等教育局専門教育課専門職大学院室長から、平成27年法曹養成制度改革推進会議決定、中央教育審議会法科大学院等特別委員会での議論及び与党における議論等、本法案の策定に至った経緯のほか、検討中の法案のうち司法試験制度の見直しに係る部分以外について、以下の通り説明がありました。
・改革の骨子:法科大学院教育の充実を行うとともに、時間的経済的負担の軽減を図る。具体的には、法科大学院における教育の充実とともに、「3+2」のプロセスを幹とする制度改正を行い、法科大学院の定員管理により司法試験合格までの予測可能性を確保する。
・連携法の改正内容:(1)法科大学院における教育の充実(法曹となろうとする者に必要な学識等を段階的・体系的に涵養すべきことを法律に規定。教育課程や成績評価・修了認定の基準及び実施状況の公表を義務づけ。なお省令で科目群ごとの必修単位数等を明記する予定)。(2)法科大学院と法学部等との連携に関する規定の新設(法科大学院を置く大学と法曹コースを置こうとする大学が連携協定を締結し文科大臣が認定する制度)。(3)法科大学院の入学者の多様性の確保(未修者、社会人、早期卒業・飛び入学者に対する入試における配慮義務を規定)。(4)法務大臣と文科大臣の相互協議の規定の新設(収容定員等につき相互に協議を求めうる旨規定。なお政令により法科大学院の定員増を認可事項とし、文部科学省告示により2,300人程度を入学者総数の上限にする予定)。
・学校教育法の改正内容:飛び入学資格の改正(現行の者に加え、それと同等以上の資質・能力を有すると認められる者を追加。判断材料として省令で法科大学院の既修者認定試験を規定)。

 次に藤田正人法務省大臣官房司法法制部参事官から、在学中受験を含む司法試験制度の見直しに関する議論の経緯等のほか、検討中の法案のうち司法試験制度の見直しに係る部分について、以下の通り説明がありました。
・政府方針で平成30年度までと期限の区切られた法科大学院集中改革の取り組みを踏まえ、それに合わせる形で司法試験制度の見直しを行う。
・司法試験法・裁判所法の改正内容:(1)在学中受験資格の導入(所定の単位を修得しており、1年以内に修了見込みと学長に認定された者に受験資格を付与。なお、受験可能期間の起算点の特則(在学中受験しない場合は起算しない)を規定)。(2)司法修習生の採用要件の見直し((1)の資格での合格者は法科大学院修了を要件)。(3)予備試験の科目の見直し(法科大学院での選択科目相当科目の履修義務付け等を踏まえ、予備試験(論文式)に選択科目を導入するとともに一般教養科目(論文式)を廃止。なお司法試験の科目は変更なし)。
・施行期日:平成35年司法試験から在学中受験開始。予備試験の科目見直しは平成34年から。
・司法試験の実施時期は法令事項ではなく、現時点で確定した方針はない。法科大学院教育との連携を図り且つ教育を阻害しないという観点から、引き続き、関係者と検討する。
・法改正が実現すれば、法科大学院教育と連携した司法試験の在り方について検討する会議体の設置を、法務省として前向きに考える。
・司法試験の選択科目については廃止の方向も検討したが、多様な法曹人材養成の理念・ニーズ等を踏まえ、今回の改正では存置する方向となった。法科大学院の教育課程や学生の到達度等との関係で課題があることは承知しており、適切な運用に向けて関係者と協議したい。
・この間の検討の過程で関係各位に不安を与えたことは遺憾であり、引き続き丁寧な対応に努めたい。

 その後、大月室長・藤田参事官と総会出席者との間で質疑が行われ、さらに総会出席者の間で活発な意見交換が行われました。若干名の出席者からは、これまでの協会の方針を変更し、在学中受験を含む本法案には反対すべきであるとの意見も出されましたが、結論として、次のことが総会の多数により承認されました。
 昨年9月の臨時理事会・11月の定時総会において、司法試験の在学中受験を認めることについて「専門職大学院としての法科大学院教育が維持されることを条件として、反対しない」との基本的方針及び上記4点の具体的対応方針が承認されたことを踏まえ、本法案についても、同様の条件及び具体的対応方針の下、いわゆる「3+2」及び在学中受験の点を含むパッケージとしての法案全体に協会として賛成する前提で、執行部が今後関係各所と折衝に臨むこと。

2 共通到達度確認試験について

 片山直也専務理事(慶應義塾大学)から、共通到達度確認試験第5回試行試験実施に向けての協力等に対する謝辞が述べられました。また、共通到達度確認試験(以下「本試験」)実施に係る分担金拠出の依頼(2月12日)に関し、説明不十分の点があったことについて謝罪がありました。
 続いて、藤本亮入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会主任(名古屋大学)から、分担金拠出依頼の経緯等について、説明がありました。(この点につきましては、3月20日付で協会事務局より会員校宛に補足説明文書をお送りしております。)
 また、藤本主任から、本試験の運用方針について、以下の通り説明がありました。
 (1)受験者は原則として未修1 年次在籍者(休学者を除く)。2018年度以前入学の未修1 年次在籍者(休学者を除く)についても受験を原則とするが、各法科大学院の事情により受験を義務付けないことも可とする。
 (2)進級判定に係る資料の一つとするのは2019 年度以降入学の未修1 年次在籍者。
 (3)長期履修制度の場合にどのように進級判定の資料とするかは各法科大学院の裁量に委ねる。
 (4)受験者に問題の持ち帰りを認め、試験当日に正解を公表する。
 (5)追試験は各法科大学院で実施する。試行試験過去問等を利用して対応されたい。

 次回総会は、2019年6月22日(土)に東京にて開催する予定です。会場・時刻を含めた詳細は追ってご案内いたします。