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法科大学院Q&A

Q1 法曹の仕事ってどのように拡がっていますか? 就職状況は改善していますか?
Q2 法科大学院に入学するためにはどのような準備が必要ですか?
Q3 法科大学院の授業ってどんな感じですか? 入学するとどんな生活になるのですか?
Q4 法科大学院に行くためには,どのくらいの費用がかかるのですか?
Q5 法曹になるには,法科大学院ルートと予備試験ルートのどちらがよいですか?

Q1

法曹の仕事ってどのように拡がっていますか? 就職状況は改善していますか?

A1

 最近まで国は、法曹の数を大幅に増やす施策を実施してきましたが、人数の増加のペースと仕事の量のバランスが崩れ、就職状況の悪化や収入の減少などが指摘されてきました。

 しかし他方で、法曹の数が増えたことにより、普段の生活の中で生じたトラブル解決のために、これまで以上に皆さんの身近で弁護士などの法曹が仕事をするようになり、またこれまで法曹があまり関与してこなかった分野での仕事も格段に増え、市民と法曹の距離は確実に縮まっています。

 また、近年は法律事務所だけでなく、企業や自治体で活躍する弁護士も大幅に増えています。このように法曹が仕事をする領域が拡大することによって、働き方も多様になり、就職状況もかなり改善しています。

 各法科大学院でも、出身法曹の同窓会などの団体や、実務家(法曹)教員などを通じ、多彩な就職支援を行っています。

 就職後の収入についても、2016年に行われた弁護士の収入・所得、奨学金等調査(法務省)によれば、登録後5年目の弁護士の中央値で、年間収入が1000万円を超える結果になっています。また、法曹は、子育てや家族の介護が必要な時期など人生の様々な段階で、働き方を選択できる職業だと言われていますが、活躍の場が拡がったことに伴ってより働きやすくなってきているとも言えます。

 皆さんが、熱意をもって法科大学院に進学し、正義感をもって法曹としての仕事に取り組もうとすれば、活躍する場は必ず見つかりますし、努力や工夫次第でますます活躍の場は拡がっていくでしょう。

Q2

法科大学院に入学するためにはどのような準備が必要ですか?

A2

 多くの法科大学院には、未修者コース(3年)と既修者コース(2年)があります。

 未修者コースは、大学時代、全く法律の勉強をしてこなかった方も対象として、一から法曹になるために必要な法理論と実務を学ぶコースです。

 未修者コースの入学試験においては、法律学以外をテーマとした小論文試験や、面接試験などが行われます。

 既修者コースは、法科大学院入学前に一定の法律の勉強をした経験がある方のためのコースです。ほとんどの法科大学院では、既修者コースの入学者は未修者コースの2年目に加わって勉強するかたちになっています。

 法科大学院の入学試験では、各法科大学院と受験するコースによって、小論文や筆記試験、面接、既修者コースの場合には基礎的な法律科目についての試験が課され、そのほか外国語に関する検定試験の成績などの資料の提出が求められることもあります。

 法科大学院によっては、学部における学業成績等を勘案して、大学3年次からの飛び入学を認める法科大学院もあります。また、大学によっては、一定の条件を充たすと3年で卒業できる早期卒業の制度もあります。飛び入学や早期卒業で法科大学院に進学すると、最短で大学入学から5年で司法試験の受験資格を取得することができます。

 法曹として活躍するためには、多様な価値観を理解する力が求められます。そのためには、法科大学院に入学するための法律学の勉強や小論文の表現力の向上などももちろん大事ですが、部活動、サークル活動やボランティア活動、社会貢献活動など、学業以外に多様な経験をすることも重要です。ほとんどの法科大学院では、入学願書提出の際、自己PRの文書を提出することが求められていますので、皆さんの経験は、そういった文書に記載することになります。皆さんの様々な経験は、法科大学院を修了し、法曹になったとき、必ず役立つはずですから、法科大学院入学前に、ぜひ多様な経験をし、様々な価値観を理解する力を身につけてください。

Q3

法科大学院の授業ってどんな感じですか?入学するとどんな生活になるのですか?

A3

 未修者コースの1年目では、基本的な法律科目や、基礎的な法文書の作成、法的リサーチの方法などを学びます。一方、既修者コースは、未修者コースの2年目に既修者コースの方が加わるかたちになるのが一般的です(未修者コースと既修者コースについてはQ2を参照してください)。

 勉強が進んでくると、ゼミなどで、裁判官・検察官・弁護士等の実務家教員や研究者教員と議論をしたり、実践的な法文書作成を学ぶなどします。

 また、実際の事件を素材に法律相談から裁判手続までの解決策を探る体験授業、裁判手続を通じて法的な思考力や法文書作成の力をつける模擬裁判、様々な分野の法律事務所などでのエクスターンシップ、最近の企業活動を前提にしたビジネス法務に関する授業などもあり、実務的な科目も充実しています。また、法科大学院によっては、司法過疎地域に法律相談に行く、ユニークな授業もあります。加えて、知的財産法や環境法など、最先端の専門法分野についても学ぶことができます。司法試験対策に限らず、広い視野を持った勉強ができ、法科大学院での経験が、将来法曹になった後、大いに活きることになります。

 普段の授業にしっかりと取り組むことにより、司法試験に合格することができますが、各法科大学院は、学習アドバイザーによるゼミ、起案指導など、皆さんの自学自習を支援する様々な工夫をしています。

 加えて、法曹の多様性を確保するという観点から、法科大学院では、特別な入学試験枠を設けるなど、法学部以外の他学部出身者や社会人経験者を広く受け入れる工夫もされています。いろいろな経験をしてきた多くの仲間の学生と触れ合う中で、多様な価値観を身につけることができます。

Q4

法科大学院に行くためには、どのくらいの費用がかかるのですか?

A4

 法科大学院は、法曹養成のための密度の濃い専門教育を少人数で実施する教育機関ですので、比較的高い学費がかかります。学費は法科大学院によってまちまちですが、国公立であれば授業料が年間80万円程度、入学金が20万円前後、私立であれば授業料が年間150万円前後、入学金が30万円から50万円くらい、になるのが標準的です。

 しかし、経済的な事情で法曹の道に進めないということがないよう、日本学生支援機構の奨学金のほか、各法科大学院が、独自の給付、貸与の奨学金制度を作り、対応しています。

日本学生支援機構の奨学金(貸与)
▶ 利用には家計、学力等一定の基準があります。

〇無利子奨学金 月額5万円または8万8000円から学生が選択(2015年度実績1,877人)
〇有利子奨学金 月額5万円、8万円、10万円、13万円、15万円、19万円、22万円から学生が選択(2015年度実績822人) ※法科大学院では、無利子奨学金の貸与を受けていた学生のうち、3割の方が全額または半額の返還免除を受けています(2015年度の免除実績 全額免除1割、半額免除2割)。

※法科大学院では、無利子奨学金の貸与を受けていた学生のうち、3割の方が全額または半額の返還免除を受けています(2015年度の免除実績 全額免除1割、半額免除2割)。

法科大学院生に対する経済的支援
 法科大学院では、学業成績が優秀と認められる場合に、法科大学院の入学金や授業料を免除・減額する制度や大学独自の奨学金制度が設けられています。

 法科大学院において授業料等の減免制度や奨学金制度を活用している学生は全体の3分の2に及びます。特に、法科大学院の大半(8割以上)が法科大学院生のみを対象とした独自の給付型の支援制度を設けており、法科大学院でも利用できる大学全体の制度を含めると、すべての法科大学院において給付型の支援制度が利用できるようになっています。

Q5

法曹になるには、法科大学院ルートと予備試験ルートのどちらがよいですか?

A5

 司法試験の受験資格を得るためには、法科大学院を修了することが基本とされていますが、経済的事情や実社会で十分な経験をしているなどの理由によって法科大学院を経由しない人のために予備試験制度が設けられています。

 法科大学院は、法曹を養成するための制度の中核として位置付けられており、法理論だけではなく実務を意識した少人数教育が行われ、各法科大学院の特色に応じてカリキュラムの充実が図られています。教員には研究者教員と実務家教員がいること、OBOG法曹による手厚い学習支援体制が整えられていること、教員との距離が近く、学生同士の密な交流があることも法科大学院で学ぶ上でのメリットです。

 予備試験合格者の司法試験合格率が高い、とよく言われますが、法科大学院入学者全体の中での司法試験合格率と、予備試験受験者全体の中での司法試験合格率を比較すると前者の方がはるかに高率となっています。予備試験の最終合格率は例えば2015年度でいえば約3.8%ですから、予備試験受験者全体の司法試験合格率は、相当に低くなります。

 また、予備試験ルートは独学で勉強して短期間に合格することができれば、経済的にも時間的にもコストがかからないことになりますが、予備試験受験のために予備校を利用する場合、年間100万円前後の受講料が必要といわれています。法科大学院に入学すると当然学費がかかりますが、Q4で説明した経済的支援制度を利用することもできます。

 また、学業成績が優秀な学生については、学部入学から5年間で法科大学院を修了できるよう、学部早期卒業や飛び入学制度を利用して法科大学院の既修者コースに入るルートが拡充されています(2016年度入学者で39人。100人程度まで増加の見込み)。

 法科大学院では、一発試験の予備試験ルートでは得られない能力に加え、教員や学生と一生ものの深い人的ネットワークを得ることができます。また法科大学院修了者にのみ与えられる「法務博士」という学位は、法曹になった後の海外留学や国際機関での勤務において大きな意味を持ちます。このため法科大学院に通いながら予備試験ルートで司法試験に合格した学生が、合格後も中退せずに法科大学院を修了するケースも出てきています。

 どちらの道を選択するかは皆さんが決めることですが、法科大学院で得られる様々なメリットについてはぜひ知っていただきたいと思います。

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