理事長声明「再び理念を確認して」

2007年9月1日
法科大学院協会 理事長 佐藤幸治

Ⅰ 法科大学院協会は、司法試験考査委員の一人(その後解任)が、所属する慶應義塾大学法科大学院(その後退職)において、試験前に答案練習会なるものを行い、その中で司法試験の問題を示唆したのではないか、さらには、司法試験受験者に対して、再現答案を提出すれば添削をする旨のメールを送るなど、不適切な行為を行ったとされる事件について、その後の事態の展開をも踏まえ、7月24日、臨時の理事会を開いて検討した結果、協会としても事態を詳らかにする必要があると判断し、調査委員会を設けて早急に調査を行い、必要に応じて適切な措置を講ずる旨を決定した。そして当調査委員会(委員長後藤昭常務理事)は、9月1日付の調査報告書を理事長に提出した。

これを受けて、本日、臨時の理事会を開き、調査報告に基づき審議を行った。その結果、理事会は、事柄の重大性に鑑み、本協会規約第9条に基づき、慶應義塾大学法科大学院に対し、2007年9月1日から1年間、会員資格の停止を行うこととし、既に同大学院から提出されていた理事および委員会主任の辞意表明を受理することとした。

Ⅱ 今般の事件は一法科大学院における一教員の特異な行為であることは明白であるが、法科大学院の教育理念や新司法試験の趣旨に対する国民の理解を阻害したことは否定できない。何よりも、法科大学院における教育があたかも新司法試験に合格させることだけを目的とするものであるかのような誤解を広めたのではないかと危惧される。

7月6日の理事長名の「法科大学院制度と新司法試験の原点に立ち返って」で述べたように、法科大学院は、双方的、多方向的で密度の濃い教育を通じた、法律基本科目群、実務基礎科目群、基礎法学・隣接科目群、展開・先端科目群のバランスのとれた履修を確保し、「国民の社会生活上の医師」たるにふさわしい法曹を養成しようとするものであることは、いくら強調しても強調しすぎるということはない。われわれは、今回の不幸な出来事の背景に思いを致すとともに、法科大学院創設の原点を深く心に刻み、国民によってわれわれに託された重い使命に応えるべく全力を傾注したいと考える。

関係各位はじめ広く国民の変らぬご理解とご支援を賜れば幸いである。

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