「各法科大学院におけるコア・カリキュラムの運用状況把握のための調査」報告書
「各法科大学院におけるコア・カリキュラムの運用状況把握のための調査」報告書(2025年6月30日公表)
「平成の司法制度改革」の流れの中で2004年に法科大学院制度が始まったが、それからほどなくして、法科大学院教育の質の向上を図るべきであるという声が高まってきた。
そこで、文部科学省は、2008年度・2009年度の両年度にわたって「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム」(以下「プログラム」という。)として「法科大学院コア・カリキュラムの調査研究」(以下「調査研究」という。)を実施した。
この間に、2009年4月にとりまとめられた中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(以下「法科大学院特別委員会」という。)「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」では、法科大学院修了者の質の保証のための改善方策の一つとして、すべての法科大学院における共通的な到達目標を策定する必要があるとの提言がなされている。
上記の調査研究を実施した調査研究班は、2009年12月に法科大学院における「共通的到達目標(コア・カリキュラム)モデル(第一次案)」を策定し、これを公表した。その後、各法科大学院へのアンケート等をふまえて、2010年3月に上記のプログラムと法科大学院協会の共催で開催されたシンポジウムにおいて「共通的到達目標モデル(第二次案)」が公表された。そこで表明された意見やその後に関係機関から寄せられた意見をふまえてさらに修正がなされ、同年9月に「共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)」が公表された。
また、同月に開催された第42回法科大学院特別委員会においては、同委員会第2ワーキング・グループがとりまとめた「共通的な到達目標の在り方に関する検討結果」が了承された。これによれば、「各法科大学院が、学生が修了時までに確実に修得すべき知識・能力の内容・水準として、適切な到達目標を設定」し、それが「ミニマム・スタンダードとしての『共通的な到達目標』に照らし、それと同等もしくはそれを上回る到達目標となっているかを評価することが期待される」とされている。
その後、「共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)」をふまえた到達目標が設定されているか否かが法科大学院認証評価でも考慮されるようになったこともあり、各法科大学院においては、そのような到達目標が設定されるケースが増加した。
もっとも、法科大学院を取り巻く環境がより一層厳しさを増し、法科大学院の募集停止・廃止が相次ぎ、また、いわゆる「3+2」制度や司法試験の在学中受験の導入など、法曹養成制度自体が大きく変わることになった。ところが、「共通的到達目標モデル(第二次案修正案)」が見直されることもなく、また、各法科大学院における到達目標が法科大学院間で共有されることもないまま、10年以上が経過した。
このような状況を受けて、法科大学院協会は、2022年6月に開催された総会において、カリキュラム等検討委員会の下にコア・カリキュラム小委員会を設置し、まずは各法科大学院におけるコア・カリキュラムの運用状況について調査を実施することにした。
この小委員会における議論をふまえて、2025年3月から4月にかけて、「各法科大学院におけるコア・カリキュラムの運用状況把握のための調査」を実施した。本報告書は、この調査結果を紹介するとともに、若干の分析を試みるものである。
